コンシャス

(笑)でとどけるマジメなウェブマガジン(仮)

酒の肴にこの一枚

【過去記事(2004年1月掲載)】KID A / RADIOHEAD – 1/4 –

『キッド・エー』(Kid A)

イギリスのロックバンド、レディオヘッドのスタジオ・アルバム。

大々的なシングルやPVの制作を行わなかったにもかかわらず、イギリスでは発売1週間で30万枚以上を売り上げ、アメリカでもアルバムチャートで1位を獲得、日本でもアルバムチャートで3位に入るなど成功を収め、世界中で400万枚以上を売り上げた。(Wikipediaより)

「キッドA」を肴に一杯!

はい、『KID A』の「A」は、「あめやん」の「A」やと主張し続けて丸5年、でお馴染み、僕です。

アルバムが出る前から主張してたわけやね(笑)。さすが、あめやん!! いやしかし、僕も負けてません。“大阪・寝屋川の『KID A』評論家”と言われてる前田です。

評論するジャンル、せまっ!! ということで、毎回1枚のアルバムを聴きながら、つらつらとオタクトークを繰り広げる完全なる自己満コーナー、記念すべき1回目はやはりこのアルバム、レディオヘッドの『KID A』ですね。

間違いないでしょう。1回目はこれしか考えられない。では行っちゃいましょう。

M1「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」

もう、この曲名だけで完全に名言。

そういうことやな。

この曲は、このアルバム全体の象徴になってる。音的な面で言うと優しくて、シェイプが丸い音像。そして、このキックの弱さ。ここでしょ、ポイントは。

「水面下の爆発」と言うか、「表面に現れないエモーション」と言うか……。

うん。普通はこれ、もうちょっとキックのレベルを上げてしまう。

そうやな。しかもこの曲にいたっては、フィルのドラムはキックしか鳴ってないし。「おい、フィルよ、お前それでいいんか!」っていう(笑)。まあつまり、抑制の効いてるっていうこと。

この「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」っていう言葉自体が、このアルバムのメタファー、つまり象徴となってるわけですよ。

そうやね。この時は、トム・ヨークが自分の声に自信が無くなって、ボーカルにエフェクトをかけまくっているけども、とはいえ、やり過ぎてないんよな。

そうそう。こういうことやり出すと、普通ならやり過ぎてしまう。

『KID A』が出た頃、いわゆるエレクトロニカというジャンルで活動してきた人からしたら、「こんなもん、別に世紀のアルバムでも何でもないわ!」みたいなディスの嵐が飛んでた。確かにずっとそのジャンルでやってきた人達からすると、技術的な凄さとか、革新性があったわけじゃないかもしれないけど、結局「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」っていう言葉が示すように、“あるべき所にあるべき物があって、必要最小限の音がきれいに鳴ってる”っていうところに辿り着いてないんちゃう? 

音の話だけでなく、トムがここで言ってるのは、「世界で起こってることは、すべて起こるべくして起こってる、あるべくしてある」ってことやと思う。それは戦争だってそうやし、政治に関することだってそうやし。

俺もそう思うんよな。俺は“因果応報”っていうのを信じてて、やっぱり悪いことしたら返ってくる、だとか。もちろん自分の運命は自分で変えれるもんやとは思うけど、やっぱりある程度決められてるもんやと。「自分は絶対出来る人間や」って自分で決めつけてるから、立ってられるみたいな、俺はそういうところで生きてるから。あと『KID A』に関して言えるのは、どんな感情にもフィットするってことやな。

そうそう。このアルバムは、制作にめっちゃ時間がかかって、メンバー自身が「本当に辞めたかった」「辛すぎた」って言ってるけど、リスナーには全然その辛さとか、押しつけがましい部分がない。「あ~、こいつらほんまに頑張ったな~」っていう感じでもないし。スッと入ってくる。どんな感情も入れられるし。

結局そこを意図したんじゃないかな、とも思う。例えば「どこかがボコッと出っ張ってて」っていう、いびつな物を作ろうとしていないからこそ、時間がかかったんかもしれへん。

やろうと思えば、もっとできるはずやもんね。でも絶妙のバランスをとったわけで。

同じように、「水面下のエモーション」みたいなコンセプトを掲げて、時間をかけて作ったアルバムって、例えばマッシブ・アタックの『メザニーン』とかもそうやと思うんやけど、時間はかけたのに、でき上がったものを聴いてみると、音数が少ないんよね。

うん。コーネリアスの『POINT』とかもね。『FANTASMA』からあれだけ時間かけたのに。

M2「KID A」

はい、と言ってる間に『KID A』の「KID A」に入っております。

あめやんは、このアルバムでこの曲が一番好きやったっけ?

そうやなぁ。もちろんその時によって変わるんやけど、もしかしたらレディオヘッドのすべての曲の中で一番好きかも。

それはどういう所が?

ん~、そうやなぁ……、まずこの曲、このアルバムの中ではリズムがちょっといびつでしょ。

そうやね。

でもぜんぜん聴きにくくないいびつさっていうか。それと音の響き。最高。メッチャ優しい。

優しいなー。このトムのボーカル、「FAKE PLASTIC TREES」とか「STREET SPIRIT」とかを歌ってる頃のメロディーとは雲泥の差、っていうか。それこそ「CREEP」なんかとは比べもんにならん。

うん。今はMACで聴いてるから少し分かりにくいけど、この曲はちゃんとしたスピーカーで聴くと、パンで左右のスピーカーに音を振ってるよね。それがすごく気持ち良くて。

そのパンの振り方っていうのが、“いかにも”っていうのじゃないんよな。他の曲に関しても言えるんやけど。

そうそう。ほんまにさりげない。「振ったったぞ。どーや!?」っていうのがなくて、気付けば振ってて気持ち良かった、っていう……。あと、この曲って実は結構情報量多いでしょ? いろんな音が入ってて。

このアルバムの中では一番多いかも知らんな。

うん。俺は『KID A』を何度も何度も聴いてるけど、何回聴いても、何年聴いても、その度に新しい音を発見したりするんよな。それがすごい所。「おー! ココにこんな音入ってたんか!!」って。

全部の音が自然に調和してて、それまでは意識せずにス~っと流れてたんやろな。この曲は「EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE」とはまたキックの音色が違うね。

うん。ラップトップミュージックではあるんやけど、ドラムが生っていうのもあって、“バンド力学”が前に出てる。結局バランスとしては絶妙。

んで、ココな。(TIME3:05~)

ココ!!

デシベルの上げかたがマイルド過ぎるから(笑)

(爆笑)

相当マイルド(笑)

吸い込まれる! いわゆる“エモさ”じゃないエモさってこういうこと。

『POINT』のリリース時に、小山田圭吾が何かの取材で「みんな感情を表現するっていう面に焦点を当てて、それは例えばハードコアとかヒップホップとかの“怒り”であったり、“喜び”であったり、そういう仰々しい表現をすることがいわゆる“エモい感情表現”と思ってる。でも人間って、“無感情”の方が多い。ボケッとすることの方が多いから、そういうのを表現してもいいじゃないか」っていうようなことを言ってて、俺はそれを聞いた時にゾクッとしたんよな。

うん。みんな非日常の方にフォーカスしてしまうけど、本当には日常の方が多いわけであって……。

俺らがJ-POPにいまいち歩み寄られへんのはそういう所やねん。そりゃもちろん俺らだって恋もするし、そういう曲を聴いてシンパシーを感じることもあるかもしれんけど、あいつら四六時中、恋の歌を歌っとるから。

そうやな(笑)

普段そんなこと思わんやろ、と。腹も減るし、眠たいとも思うやろし、ボケッとすることもあるやろし。つまりそういうことばかりをフォーカスしてると胡散臭いぞ、と。

■M3「NATIONAL ANTHEM」

『KID A』ツアーの時に、常に1曲目にやってた「NATIONAL ANTHEM」です。

このベースラインがね。

ベーシストは1度はコピーしたと言われる……。

(笑)

やっぱりグリーンウッド兄弟は、演奏的にはレディオヘッドをすごい支えてるよな。

ギタリストとしてのエドとジョニーっていうのはどうなの?

ジョニーは本当に器用。全身が楽器やからな。だから、一応の肩書きはギタリストにも関わらず、ギターを弾かすと、案外あんまり変わったリフは弾かず、けっこう普遍的なものを弾く。ただ、他の楽器を弾かせても、ギターと同じくらいのポテンシャルを発揮するよね。で、エドはむしろジョ二―よりも変わったことをやりたがる。この「NATIONAL ANTHEM」で言うと、永遠に続くサスティンを組み込んでて、それをギターでやってる。キーボードでずっと鍵盤を押し続けてる感じ。ジョニーならこういうことはキーボードで代用してやるんやけど、エドは絶対ギターでやるんよ。

なるほど。まあこの曲はリズムが平坦やから、確かにライブの1曲目には持ってこいかな。

うん。ノリやすいから。

俺がこの曲は好きなのは、このオーケストラのプログラミングが全然普通じゃない。どんどん崩れてくる。

このラッパ吹いてるのはジョニーらしいけど、トムがジョニーにこの崩れていく感じを「交通渋滞でやかましい感じにして」って説明したらしいわ。トムはそういうアバウトな表現でバンドのメンバーに伝えるらしいな。それを汲み取るメンバーの力量も凄いって思うんやけども。そういう所が「やっぱりレディオヘッドって“バンド”なんやな」って思ったりもするわけ。

そうやね。曲の後半のホーンは、ほんまにカオスやからね。でもバランスがとれてる。この曲に関しては、ベースとドラムが平坦っていうのが重要やね。上音は、言うたらグチャグチャやから。すごくない? このホーン隊が。マジでグチャグチャ。でもバランスがとれてるんよな。

まさに交通渋滞やな。これだけ上音を崩していっても、レディオヘッドのフィルターを通すと、いわゆる“奇をてらうこと”だけに重きを置いてるエレクトロニカ勢とは一線を画すものになるっていう良い証明になったんちゃうかな、この曲は。

うん。そやね。こ難しくないんよな。

結局レディオヘッドをこ難しくしてるのは評論家なんやって! 基本的には簡単なことしかやってない。最近ほんまにそう思うわ。レディオヘッドをこ難しくしてるのは山崎洋一郎やから(笑)

「エレクトロニカ」とか「音響」とか、そういうジャンルを当てはめてしまったことも良くなかったんかもしらんな。「ポップミュージック」でいい。

確かにオウテカやエイフェックス、さらにチャーリー・ミンガスとか、普通にロック聴いてる人からすれば、奇をてらっているように聴こえるアーティストに影響されて作ったアルバムなのかもしらんけど、結局『KID A』自体は全然エレクトロニカとかじゃないって最近めっちゃ思うんよな。だからこの前のアルバム『OK COMPUTER』から、ココに流れたのは別に何もおかしくない。あの時にみんなワイワイ騒いでたけど、普通に自然やったんちゃうかなと俺は思ったりもする。

そうやな。ほんで最後の(TIME5:30~)この処理ヤバくない??

これヤバい。来日公演の時は、ジョニーがその場でラジオの音拾ったりしてた。

おー、やってたね。

こういう所の遊びもあるからな。

ちょっとあか抜けない所がいいんよ、いつも。

酒の肴にこの一枚